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  3. 相続時精算課税制度による贈与とは?

従来は節税にはならないとされていましたが、令和6年度以降は非課税額が新設されています。
メリットがある場合や注意点について、わかりやすく解説します。

相続対策として相続時精算課税制度は有効ですが、誤った方法で贈与を実施してしまうと節税対策とならないばかりか、余計な課税が課せられますので注意が必要です

今回は、「相続時精算課税制度」における贈与税の計算方法や、適用における注意点について、わかりやすく説明したいと思います。

1.相続時精算課税制度とは?

令和6年度改正にて、年110万円の基礎控除が新設され、年110万円までの贈与の場合は贈与税が不要となりました。相続時の持ち戻しもなくなっています。

相続時精算課税制度は、贈与者1人につき、年110万円を超える贈与額を合計して最大2500万円までの贈与が非課税になる制度で、2500万円を超えた部分については、一律20%を乗じて贈与税を算定します。

原則として60歳以上の父母や祖父母から、20歳以上の子や孫に財産を贈与した場合において選択でき、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日の間に一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要があります。

なお、この制度を選択した場合、選択をした年以降全てにおいてこの制度が適用され、暦年贈与へ変更することはできません!

この贈与者とは別人からの贈与を受ける場合は、暦年贈与と相続時精算課税制度のどちらかを選択することは可能です。

相続時精算課税制度という名称にある通り、贈与者が死亡し相続を行う場合に、この制度にて行った贈与金額を相続財産に加算して相続税を算定します。

なお、2500万円を超えて贈与を行った際に支払った贈与税がある場合は、その後の相続税から控除ができます。相続税の前払いを行うのと同じ発想です。

2.相続時精算課税制度における贈与税の計算、税率、非課税額

相続時精算課税制度における贈与税は、次の式により計算します。

贈与税 = ( 年110万円を超える贈与財産価額合計 - 非課税額2,500万円 ) × 税率20%

  1. 初年度に、父から2,000万円を贈与
  2. 5年後に、父から400万円を贈与
  3. 7年後に、父から600万円を贈与
    ⇒累計で贈与額3,000万円となり、2,500万円を超えた部分500万円に対して20%を乗じた金額100万円が贈与税として課税される。
  4. 10年後に、父死亡
    ⇒父の相続財産に贈与額累計3,000万円を加算して相続税を算定するが、既に納付している100万円を相続税から控除する。

3.相続時精算課税制度のメリット

① 一度に2,500万円までの多額の財産を非課税で贈与できる

相続時精算課税制度は2,500万円が非課税枠です。

暦年贈与であれば年間110万円を超える贈与に対して贈与税がかかるため、2,500万円の財産を非課税枠内で贈与するのに23年かかります。

相続時精算課税制度では、2,500万円までの財産を贈与する場合に贈与税がゼロとなるだけでなく一度に贈与することも可能です。多額の財産を非課税で贈与できることは大きなメリットとなります。

② 遺産分割しづらい財産を事前に贈与し、相続時の争いを回避できる

不動産は遺産分割がしづらく、相続時に争いのもとになることが多いものです。

ひどい場合では、遺産分割するために不動産を処分するケースもあります。

親や祖父が生きているうちにどの財産を誰に譲るか決めて贈与することで子や孫の同意を得やすく、死亡した後の相続争いを未然に防ぐことができます。

③ 収益物件を生前に贈与することで、相続税の節税になる

賃貸アパートのような収益物件を所有し続ける場合に、賃料収入は親の財産として蓄積されます。親が死亡するまでに相続財産は増加し続け、相続税が増えることになります。

相続時精算課税を適用して早めに収益物件を子に贈与することで、賃料収入は子の財産となり相続税の節税につながります。

④ 値上がりする可能性のある財産を贈与することで、相続税の節税になる

相続時精算課税制度の適用後、実際に相続が発生した時に「贈与した時点の価額」を相続財産に加算します。値上がりが予想されるような財産を生前贈与する場合には相続税の節税になります。

具体的には、父親が、非上場会社の創業者で業績拡大中の企業を経営している場合で、自社株式を後継者である子に引き継ぐ際に、相続時精算課税制度を使い2,500万円で贈与します。

贈与後に株価が上昇し、父死亡時に自社株式の相続税評価額が10億円になっていたとしても贈与時の2,500万円に基づいて相続税を計算できます。

値上がり可能性のある不動産を子どもに引き継ぐ場合についても、相続時精算課税制度を使うことで贈与時点での評価額に基づいて相続税を計算できます。

このように、将来値上がりしそうな財産を有する場合において、相続時精算課税制度を適用して贈与を行うことは相続税の節税につながります。

④令和6年改正にて、年110万円の基礎控除が新設

令和6年度改正にて、年110万円の基礎控除が新設され、年110万円までの贈与の場合は贈与税が不要となりました。相続時の持ち戻しもなくなっています。

4.相続時精算課税制度のデメリット

一度適用すると、途中から暦年贈与が使えなくなる

暦年贈与は、年間での非課税額は110万円となりますが、長い年月をかけて暦年贈与を行うことで合計の贈与額が積上り、その分相続時の財産が減少します。相続が発生時に、相続開始前7年以内の贈与は相続税計算に持ち戻されますが、それより前の贈与は相続税計算に持ち戻されず、節税につながります。

相続時精算課税制度の適用をした後では、暦年贈与のメリットを享受できなくなりますので、計画的に導入することをお薦めします。

小規模宅地等の特例が使えない

小規模宅地等の特例とは、相続時に亡くなった人が居住していた土地の評価額について最大80%減額が受けられる制度です。

参照 小規模宅地等の特例とは? 最大80%節税となる理由とは?

相続時精算課税制度を利用して土地を贈与した場合は、その土地に対して小規模宅地等の特例を適用することができなくなります。

5.まとめ

相続時精算課税制度は、メリットがある半面、暦年贈与に戻れないなどのデメリットもありますので、専門家と相談しながら贈与を実施することをお薦めします。

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