住宅取得等資金の贈与とは?
住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税枠や要件について、わかりやすく解説いたします。

執筆者の紹介
公認会計士・税理士 長田憲一郎
Management LABO 経営会計事務所(マネジメント・ラボ)の代表をしています。
「相続税対策ドットコム」にて、相続税についてわかりやすく解説を行い、相続税の専門家が、初心者にやさしく、親身になって対応することをモットーとしています。相続税・贈与税などの節税について興味がある方は、どなたでも、お気軽にご相談下さい。
通常の贈与では、年間110万円を超える贈与金額について贈与税がかかりますが、子どもが住宅を購入する際に、ご両親が資金援助するケースでは、最大で3,000万円まで課税されないという特例があります。
今回は、「住宅等取得資金の贈与」について、適用要件や非課税限度額、適用における注意点について、わかりやすく説明したいと思います。
1.住宅等取得資金 贈与の概要
令和3年12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得又は増改築等の対価に充てるための金銭(以下「住宅取得等資金」といいます。)を取得した場合において、贈与税が非課税となります。
2.住宅等取得資金 贈与の適用要件
住宅等取得資金の特例を適用するためには、以下の要件を満たす必要があります。
贈与を受ける人の条件
- 贈与を受ける人が贈与者の直系卑属(子や孫)
- 贈与を受けた年の1月1日時点で20歳以上
- 所得金額が2,000万円以下である
- 平成21年分から平成26年分までの贈与税の申告で「住宅取得等資金の非課税」の適用を受けたことがない
- 自己の配偶者、親族などの一定の特別の関係がある人から住宅用の家屋の取得をしたものではないこと、又はこれらの方との請負契約等により新築若しくは増改築等をしたものではない
- 贈与された年の翌年3月15日までに、住宅取得等資金の全額を充てて住宅を取得し、遅くとも同年の12月31日までに居住すること(居住することが確実と見込まれること)
- 贈与を受けた時に日本国内に住所を有していること(受贈者が一時居住者であり、かつ、贈与者が一時居住贈与者又は非居住贈与者である場合を除く)
建物の条件・・・新築住宅の場合
- 日本国内にある住宅用の家屋
- 家屋の床面積が50㎡以上240㎡以下
- 床面積の半分以上が贈与を受けた人の居住用として利用すること
建物の条件・・・中古住宅の場合
- 日本国内にある住宅用の家屋
- 家屋の床面積が50㎡以上240㎡以下
- 床面積の半分以上が贈与を受けた人の居住用として利用すること
- 取得時に築20年以内の建築物(鉄骨造、鉄筋コンクリート造または鉄骨鉄筋コンクリート造などの耐火建築物は築25年以内)で、地震に対する安全性に係る基準に適合することを一定の書類により証明されること
建物の条件・・・増改築等の場合
- 日本国内にある住宅用の家屋
- 家屋の床面積が50㎡以上240㎡以下
- 床面積の半分以上が贈与を受けた人の居住用として利用すること
- 増改築等に係る工事に要した費用の額が100万円以上であること
- 増改築等の工事に要した費用の額の2分の1以上が、自己の居住の用に供される部分の工事に要したものであること
- 増改築等に係る工事が、自己が所有かつ居住している家屋に対して行われ、一定の工事に該当することについて、「確認済証の写し」、「検査済証の写し」又は「増改築等工事証明書」などの書類により証明されたものであること
3.住宅等取得資金 贈与の非課税限度額
住宅等取得資金の特例に関する非課税限度額は、以下となります。
消費税10%の住宅を取得した場合
契約締結日 |
省エネ等住宅 |
左記以外の住宅 |
平成31年4月1日~令和2年3月31日 |
3,000万円 |
2,500万円 |
令和2年4月1日~令和3年3月31日 |
1,500万円 |
1,000万円 |
令和3年4月1日~令和3年12月31日 |
1,200万円 |
700万円 |
消費税10%以外の住宅を取得した場合(個人間売買で中古住宅を取得し消費税が掛からない場合を含む)
契約締結日 |
省エネ等住宅 |
左記以外の住宅 |
~平成27年12月31日 |
1,500万円 |
1,000万円 |
平成28年1月1日~令和2年3月31日 |
1,200万円 |
700万円 |
令和2年4月1日~令和3年3月31日 |
1,000万円 |
500万円 |
令和3年4月1日~令和3年12月31日 |
800万円 |
300万円 |
「省エネ等住宅」とは、省エネ等基準(①断熱等性能等級4若しくは一次エネルギー消費量等級4以上であること、②耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上若しくは免震建築物であること又は③高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上であること)に適合する住宅用の家屋であることにつき、証明書などを贈与税の申告書に添付することにより証明されたものをいいます。
4.適用を受けるための手続き
住宅等取得資金の特例を適用する場合は、特例適用後の贈与税がゼロであっても贈与税申告が必要となり、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に申告を行います。
申告書に添付する書類としては、下記となります。
- 贈与税の申告書
- 受贈者の戸籍謄本
- 受贈者の源泉徴収票
- 新築や取得の工事請負契約書や売買契約書の写し
- 登記事項証明書
- 「省エネ等住宅」の非課税限度額を適用する場合は、耐震基準適合証明書、建設住宅性能評価書など
5.適用する際の注意点
① 期限内に贈与税の申告が必要
住宅資金贈与の特例を利用する場合は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、贈与税の申告書に戸籍謄本などの所定の書類を揃えて、税務署に申告する必要があります。
非課税になることがわかっていても、贈与税申告を失念してしまえば非課税特典を受けることができませんので注意が必要です。
申告期限後になってしまうと非課税にできなくなるため、贈与税申告期限までに所定書類を準備することが必要です。
② 小規模宅地等の特例が使えなくなる
小規模宅地等の特例とは、相続時に亡くなった人が居住していた土地の評価額について最大80%減額が受けられる制度です。
参照 小規模宅地等の特例とは? 最大80%節税となる理由とは?
マイホームを購入すると小規模宅地等の特例の要件を満たさなくなります。
贈与した方が亡くなった時に相続税の課税対象となる自宅の土地の評価額について80%減額ができなくなり、相続税の負担が増える可能性があります。
③ 相続時精算課税制度と併用できる
相続時精算課税制度とは、贈与した資金に贈与税を課すのではなく、相続時に相続税の課税対象とすることで、2,500万円までの贈与に贈与税がかからなくなる制度です。住宅資金贈与の特例と併用することで、贈与税の非課税枠をさらに拡大できます。
このように、住宅等取得資金の贈与については、相続税のシミュレーションを行いながら、メリットがどの程度あるのか個別に検証して判断するのが良いでしょう。
6.まとめ
住宅取得等資金の非課税の特例は、父母や祖父母から住宅購入の資金提供を受けた場合に一定額まで贈与税がかからなくなる制度で、要件を満たすことで節税メリットが大いにあります。
非課税の特例を利用するには贈与税の申告が必要であり、契約締結日や住宅性能によって非課税限度額が変わりますので、専門家と相談しながら贈与を実施することをお薦めします。
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